【一から解説】投資銀行とは?メガバンクや証券会社との違いとあわせて解説
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Alternative Careers Research Groupです。
本記事では、投資銀行の基本情報や業務内容、主要な企業や選考の流れなどを紹介します。
投資銀行に関する基本的な情報をまとめていますので、エントリー締切前にぜひ一読してください。
投資銀行が具体的にどのような会社で、どのような業務を行っているのか、詳しく知らない方も少なくないかと思います。メディアや書籍で「派手なイメージ」を持つことがある投資銀行ですが、選考を受けるためにはその真の姿を知ることが大切です。
投資銀行の就活を実際に経験し、様々な困難を乗り越えてオファーを獲得した私の視点から、その概要をお伝えいたします。
<筆者の紹介>
大学院修士2年生。2023年卒で投資銀行内定者(投資銀行部門)。サマーインターン時には戦略コンサルティングファームを中心に受験し、複数社からの内定を獲得。しかし、投資銀行の選考では初回は全滅。その後、冬の選考を経て投資銀行に方向転換し、複数内定を獲得。
投資銀行は「銀行」ではなく「証券」
一般的に「投資銀行」と聞くと、多くの方が「投資を主業務とする銀行」とイメージするかもしれません。しかし、その実態はもう少し複雑です。
要するに、投資銀行は「銀行」ではなく「証券」会社です。株式や債券などの有価証券を取り扱うことで収益を得るのが主業務です。有価証券に関連する業務は様々で、その結果として投資銀行内には多岐にわたる部門が存在しています。具体的には、企業買収のアドバイザリーや株式・債券の発行、金融商品の開発などがあります。
対照的に、通常の銀行は顧客からの預金を元に、企業や個人への融資を行い、そこから金利収益を上げるのが主なビジネスモデルです。
現代では、「〇〇フィナンシャル・グループ」のような名前の持ち主である多くの企業が、銀行と証券の両方の業務を行っています。その中で、投資銀行業務を担当しているのは「〇〇証券」で、具体例としては野村證券やSMBC日興証券が挙げられます。海外の大手投資銀行も、実際には「ゴールドマン・サックス証券」や「UBS証券」といった証券会社として活動しています。
では、なぜ「投資銀行」という名前が使われているのでしょうか。
「投資銀行」という名前は、アメリカの「Investment Bank」という言葉から来ています。この言葉の起源は確定的でないものの、資本市場の黎明期における証券引受やブローカー業務が起源とされています。特に1933年に制定された米国の「グラス・スティーガル法」により、銀行業と証券業が明確に分離されました。この変化に伴い、例えばモルガン商会からモルガン・スタンレーが独立しました。この法律は後に廃止され、銀行業と証券業は再び混在するようになりました。とりわけ、リーマンショックを経て、多くの投資銀行が銀行持株会社としての性格を強め、従来のビジネス領域を超えたサービス展開が進められています。実際、投資銀行も自己資金を投資するケースが増えましたが、「ポルカールール」の制定により、銀行が大きなリスクを取ることが難しくなっています。
特長ある各部門と、その業務内容について
このように投資銀行では幅広い金融サービスが提供されていますが、それらは「フロントオフィス」「バックオフィス」「ミドルオフィス」に三分類されます。
フロントオフィス:主に収益を生む部門。これには投資銀行部門、マーケッツ部門、アセットマネジメント部門が含まれます。
バックオフィス:フロントオフィスをサポートする部門。オペレーション、テクノロジー、HR、ファイナンス、コンプライアンス部門が該当します。
ミドルオフィス:フロントとバックの中間的な役割。リサーチやリスクマネジメント部門がこれに該当します。
会社ごとに業務区分に微妙な違いが存在しますが、投資銀行には数多の部門が存在することがわかります。新卒採用でも上記部門の多くを受験できるため、就活生は前もって興味ある領域を考え下調べを行うことが重要です。部門ごとに業務内容はもちろん、部門の規模や働き方、採用数に至るまで大きく異なります。各部門内も細かく部署やチームに分割されるため把握が大変ですが、就活生は志望する部門の細部まで理解する必要があります。
本記事では最も採用数の多い投資銀行部門について詳しく解説します。他部門についても追って記事を公開予定ですので、興味のある方はチェックしてみてください。
投資銀行部門は、ほとんどの会社で投資銀行/資本市場部門として扱われます。大枠のイメージとしては、M&A提案・実行を担う投資銀行部門と資金調達の実行を担う資本市場部門がセットになる形です。投資銀行部門はM&Aや資金調達案件を提案するカバレッジと、M&Aを遂行するエクセキューションに分かれます。さらに、カバレッジはカバーする業界ごとにチームが分かれ、GIG(General Industry Group)やFIG(Financial Industry Group)、TMT(Telecom Media Technology)が代表的です。
これに対し資本市場部門は扱う証券ごとに株式市場部門(ECM)・債券市場部門(DCM)に分かれ、それぞれの発行や引受を担います。カバレッジが獲得した案件を実行するチームをまとめてプロダクトと呼ぶこともあります。
これは一般的な分け方であり、会社ごとに微妙な違いが存在します。例えばモルガン・スタンレーには不動産カバレッジが存在し、日経証券各社はさらに細かい単位でチームが組まれます。またECMやDCMを有していない投資銀行も存在します。案件の獲得から実行に至るまでも異なり、厳密にカバレッジとプロダクトが分かれる会社もあれば、カバレッジが案件の実行まで深く関わる会社もあります。
加えて新卒社員の配属についても、内定の段階から配属先がほぼ決まる会社から、入社後ローテーションやプール性により複数チームを経験した上で本配属される会社も存在します。これらの違いは若手バンカーのキャリアパスや得られる経験の違いに直結するため、就活生一人一人が各社の制度・体制を正しく認識し、自分との親和性を深く考える必要があります。
また近年はアクティビスト対応やSPAC上場など、投資銀行/資本市場部門が対応すべきテーマも増えています。一層金融市場やマクロ情勢が複雑化する中、クライアントはもちろんマーケッツや投資家等、さまざまなステークホルダーを巻き込んだ案件提案が求められます。
外資/日系の主要企業は?
ここまで業界全般や投資銀行/資本市場部門について説明してきましたが、投資銀行業界にはどんなプレイヤーが存在するのか、改めて紹介します。
外資系投資銀行と日系証券会社に分けて語られることが多い業界ですが、この二者は国内での事業規模や働き方の面で違いがあります。
前者は米系のゴールドマンサックス、モルガン・スタンレー、JPモルガン、バンク・オブ・アメリカ(旧メリルリンチ)、シティグループや、欧州系のUBS、クレディスイス、バークレイズ、ドイツ銀行、BNPパリバなどが挙げられます。各社とも本社が欧米に位置し、国内では日本オフィスという形でサービスが提供されます。これらは世界的な金融グループとして名高く、各国の金融システムや大企業を支えてきました。日本オフィスは比較的少人数であり、投資銀行/資本市場部門は後述の日系証券会社と比較するとグローバル案件や大規模案件に絞って提案・実行する傾向にあります。それゆえ激務になることも多いとされますが、人材としての希少性や待遇は目を見張るものがあります。
後者は野村證券、SMBC日興証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券(MUMSS)、みずほ証券、大和証券などが挙げられます。日本の伝統的証券会社としての歴史を持ち、金融グループとして非常に大規模です。また日本全国にリテール網を展開しています。投資銀行/資本市場部門では日本国内の案件に強く、小規模なIPOや債券発行から国内大手企業同士のM&Aまで、幅広くカバーします。投資銀行/資本市場部門は外資系投資銀行と同様に部門別の採用を行う会社が多く、多様な案件の下、若手のうちから豊富な経験が得られます。
なお、三菱UFJモルガン・スタンレー証券はリーマンショック時に苦境に陥ったモルガン・スタンレーに対し、三菱UFJフィナンシャルグループが出資したことで現在の体制となっております。この辺りは複雑なので正確には各社HP等を参照いただければと思いますが、公表される案件数等ではモルガン・スタンレーとMUMSSは同一カウントされます。
証券業を営む投資銀行としては上記各社が該当しますが、投資銀行部門が主に行うM&Aではそれ以外のプレイヤーも関与します。
具体的には、M&Aブティックファームのフーリハンローキー(旧GCA)やラザードフレール、FAS(ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス)機能を有するBIG4各社(PwC、デロイト、KPMG、EY)ではM&Aの提案や実行に関わることができます。またコンサルティングファームや弁護士事務所、会計士事務所でもM&A案件に関する業務を受注することは珍しくありません(デューデリジェンスやPMI、リーガルチェックなど)。
このように投資銀行といっても数多くの会社があり、それぞれ社風やシステム、強みは異なります。また投資銀行部門のメインとなるM&Aについては、もはや投資銀行でなくても関わることができます。したがって就活生の皆さんは十分に自己分析や企業研究を行い、納得できる意思決定ができるよう就職活動を行なっていただければと思います。
早期に進む選考
最後に、投資銀行業界の選考スケジュールについてお伝えします。
外資系投資銀行や日系証券は各部門非常に人気が高く、内定獲得には十分な準備と対策が求められます。また選考のスケジュールやフローも特殊なので要注意です。
外資・日系ともに、多くの会社は大学3年生(修士1年生)の8,9月タイミングでサマーインターンを実施します。インターン自体は数日間が主流ですが、その参加のために厳しい選考が行われます。5,6月頃からインターン選考が始まり、具体的にはES提出→webテスト受験→複数回の面接(録画や集団面接含む)を実施後、ようやくインターン参加者が選抜されます。
インターンも単なる業務体験という趣旨ではなく、ここで改めて優秀・フィット感のある学生が選抜されます。投資銀行/資本市場部門では仮想クライアントに対するM&A提案ワークが課されることが多く、ワークの間に社員との交流セッションやチーム紹介がなされます。ワーク難易度は高く、厳しいフィードバックを受けたり徹夜の作業が必要になることもあります。
一部の外資系投資銀行は、サマーインターン実施後に早期選考という形で優秀者を対象とした最終選考を行う場合もあります。その場合9月〜12月という比較的早いタイミングで内定が出ます。それ以外の会社においては、優秀者に対しランチや面談を実施し冬の本選考に向けた囲い込み(優遇)が始まります。特に外資系投資銀行は採用数が少ない(投資銀行部門で数名〜20名程度)ため、サマーインターンに複数参加し優遇を獲得する重要性は大きいといえます。本選考が始まる前に、内定者の多くが出揃っているという状況が起こりうるのです。
外資系投資銀行で本選考は10月末頃から始まり、基本的にはサマーインターンと類似した流れで選考が進みます。サマーの優遇者はインターン選考やその後から合流し、12月〜1月には最終選考が行われ、ここで内定者がほぼ確定します。日系証券はもう少し後のタイミングで本選考が実施されるため、ウィンターインターンを別途実施する場合があります。
なお、これらのスケジュールやフローは年度により大きく異なることも珍しくないため、注意が必要です。
その年の景気や業績により採用数は増減しますし、前年度の採用実績を踏まえ選考フローが見直されることも多々あります。ですので、就活生の皆さんは常に最新の情報を入手しミスなくエントリーや受験ができるよう注意してください。
一つ確実に言えることは、早めに動くことが最重要です。サマーインターンで内定や優遇をとることを初期的な目標として、夏前からしっかりと準備を進めてください。コンサルティングファームの就活と違いケース面接はほぼ出題されませんが、ES作成〜最終面接に至るまで一貫した人物像をアピールするためには相当な準備が必要です。
本記事が、投資銀行就活に少しでも興味ある方の後押しになれば幸いです。